IT業界において、「テスト自動化エンジニア」という職種はもはや聞き慣れないものではありません。これは、ソフトウェア製品の開発・リリースにおいて非常に重要な役割を担うポジションです。テスト自動化エンジニアとは何か、そしてそのキャリアパスについて詳しく見ていきましょう。
テスト自動化エンジニアとは?
テスト自動化エンジニアは、テストを自動化するスクリプトを作成し、実行することで、ソフトウェアの品質を確保します。具体的には、テストケースを設計し、スクリプト言語を用いて自動化ツールで実行可能なコードに変換します。その目的は、バグを最小限に抑え、製品を期限通りにリリースできることです。
テスト自動化エンジニアの仕事内容:
- 顧客、現場チームのロジェクトマネージャー、開発者、ビジネスアナリスト、IT部門など、様々なメンバーと協力してプロジェクトを進める
- テスト計画の策定: テストの範囲、スケジュール、リソースなどを計画する
- 製品開発の初期段階から参加し、プログラムコード、プログラミングアーキテクチャ、コーディング規約などをより良く理解する
- 既存のテクノロジーとテストツールを統合する
テスト自動化エンジニアの仕事内容は、業界や会社によって異なる場合がありますが、優れたテストエンジニアになるためには、ソフトウェアテスト全般について深い知識を持つことが重要です。技術的な知識やプログラミングスキルを身につけることで、高度なテストスクリプトを作成し、複雑な問題に対処できるようになります。
テスト自動化エンジニアに関する誤解を解く
ソフトウェアが存在する限り、その品質を保証するためのテストは不可欠です。Mordor Intelligenceのレポートによると、テスト自動化市場は2021年から2026年にかけて14.2%という高い成長率で拡大し、その規模は400億ドルに達すると予測されています。
しかし、テスト自動化に関する誤解は存在し、この分野の仕事に対する誤った評価されている傾向にあります。ここでは、テスト自動化についてよく耳にする誤解をいくつかご紹介します。
誤解1:テスト自動化エンジニアの仕事は、開発者やプログラマーほど魅力的ではない
テスト自動化エンジニアの給与は、開発者やプログラマーと比較すると高くないケースもありますが、この考え方は、テスト自動化エンジニアの持つ潜在能力や、ソフトウェア開発における重要な役割を過小評価していると言えるでしょう。
確かに、テスターがいなければ、ソフトウェアはいつバグが発生してもおかしくなく、その原因を早期に特定して修正できる人がいなくなります。特に、製造ラインのような現場でソフトウェアに不具合が生じたら、どれほどの影響が生まれるでしょうか。
しかも、テスト自動化エンジニアの給与は決して低くありません。他の多くの職業と比較しても、テスト自動化エンジニアは魅力的なキャリアパスと言えるでしょう。この仕事は、専門的なスキルと継続的な学習意欲を必要とする、やりがいのある仕事なのです。
誤解2:自動化テストは簡単で、やることは少ない
「テストなんて、バグを見つけるだけだろう?」と思う人もいるかもしれません。しかし、現実はそう単純ではありません。アプリケーションのコードはすでに完成しているように見えても、その内部では様々な要因が複雑に絡み合い、予期せぬ動作を引き起こす可能性があります。
すべての要素が正しく連携し、製品のリリースに耐えうる品質を確保するためには、テスト自動化エンジニアは、UI設計、API、データベースなど、多岐にわたる技術領域を深く理解し、様々なツールを使いこなす必要があります。例えば、統合開発環境(IDE)の確認や、Jiraを用いたリスク管理など、幅広い知識とスキルが求められます。
誤解3:テスト自動化エンジニアはコードを書けない
このような誤解を抱いている方は、自動化テストの仕事の本質を理解していないのかもしれません。優れたテストエンジニアになるためには、常に新しい技術に挑戦し、自らコードを書いて問題解決にあたる姿勢が求められます。
自動化テストの仕事では、Java、Perl、Rubyなどのプログラミング言語を用いてテストスクリプトを作成したり、複雑なSQLクエリを駆使してテストデータを生成したりするなど、高度なプログラミングスキルが求められます。また、異なるデータベース間のデータ移行など、幅広い技術知識も必要となります。
テスト自動化エンジニアの仕事とは
簡単に言うと、テスト自動化エンジニアは、ソフトウェアの品質を保証するために、反復的なテスト作業を自動化する専門家です。具体的には、以下の業務を行います。
- テスト対象となるソフトウェアの機能や構造を深く理解し、様々な種類のソフトウェアテストの概念を習得します。
- 自動化フレームワークを構築し、テストシナリオを開発するには、高度なプログラミングスキルと技術力が不可欠です。
- テストの目的を明確にし、その目的を達成するために必要なテストケースを選定します。
- レポートの比較やExcelデータの抽出など、反復的な作業を自動化することで、チーム全体の効率化を図ります。
- チームメンバーと協力し、テストプロセスの継続的な改善に取り組みます。
上記に加え、各企業の事業内容によって、テスト自動化エンジニアの業務は多岐にわたります。特に、ソフトウェアサービスを提供する企業では、テストの迅速化とコスト削減が求められるため、テスト自動化エンジニアの役割は非常に重要です。
テスト自動化エンジニアは魅力的なキャリア選択肢ですが、テスト自動化の基盤を構築し、高度なテストケースを作成するための専門知識を習得する必要があります。
テスト自動化エンジニアへのステップアップ
手動テストの経験は、自動化テストのスキルアップに大きく貢献します。手動テストから自動化テストへキャリアチェンジを考えている方は、以下の10ステップを参考に進めてみましょう。
① テストに関する基礎知識の習得
テストの種類とテスト設計手法に関する基礎知識を習得することが重要です。特に、手動テストとテストケース設計の両方を担当する場合には、すべてのテストケースを漏れなく網羅し、正確に設計できる能力が求められます。
② HTML、CSS、Xpath知識の習得
HTML、CSS、XPathの知識は、テスト自動化において不可欠です。 これらの知識を習得することで、Webページ上の要素を正確に特定し、安定したテストスクリプトを作成することができます。そのおかげで、プロジェクトに自動化テストをより正確に適用できるようになります。
③ドメイン知識の習得
ドメインに関する誤った理解は、バグの発見漏れや、不適切なテストケース設計につながり、結果としてソフトウェアの品質低下を招く可能性があります。Linux、SQL Server、アプリケーションに関する知識も重要ですが、エンドユーザーのニーズを深く理解するためには、ドメイン知識が不可欠です。
テスト自動化エンジニアが、企業のビジョンや事業内容を深く理解していれば、より精度の高いテストシナリオを作成し、業界特有の潜在的な問題を早期に発見することができます。
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④ テストフレームワークの熟練
テスト自動化フレームワークは、テストツールの標準機能では実現できない、プロジェクトに合わせたカスタマイズ可能な構成を提供します。テストフレームワークを活用することで、自分で一から構造を設計する手間を省くことができます。
⑤ ソフトウェアデザインパターンの理解
デザインパターンとは、さまざまな状況で使用できるテンプレートであり、コードに直接変換可能です。これにより、ソフトウェア開発者は時間とコストを節約し、エラーを減らすことができます。ソフトウェアデザインパターンを理解し、活用することで、フレームワークをより簡単に構築でき、エラーを迅速に発見し修正することができます。
現在、自動化テストにおいて最も広く採用されている設計パターンは、POM(Page Object Model)です。POMは、ページやページ内の要素を個別のオブジェクトとしてモデル化し、各ページ内のすべてのアクションと属性をまとめるのに役立ちます。他の多くのパターンについて学ぶことができますが、少なくともPOMパターンには習熟しておくべきです。
⑥オープンソースツールの活用
自分のテストケースを自動化するために選択するオープンソースは、プロジェクトや個人の習慣によって異なります。多くの組織はさまざまなアプリケーションを自動化するためにさまざまなアプローチを取っています。例えば:
・Webアプリケーション
・WebドライバーAPIまたはWebサービス
・モバイルアプリケーション
・デスクトップアプリケーション
⑦ データベースに関する知識
ソフトウェア開発プロジェクトの多くはデータベースを利用するため、データベースに関する知識は不可欠です。データベースの構造を理解し、データの操作、クエリの実行、データの整合性確保などのスキルを習得することで、より効率的にテストを行うことができます。
⑧プログラミング言語とツールの習得
テスト自動化にはプログラミング言語が必要になります。
テスト自動化のスキル向上のためには、少なくとも1つのプログラミング言語を習得することが重要です。Java、JavaScript、Python、Groovy、Ruby、C#など、様々な言語が利用できます。これらの言語を習得することで、開発者とコードを共有し、共同で品質向上に貢献することができます。
さらに、異なるプログラミング言語を使用する場合にサポートされるさまざまなツールもあります。最適なサポートツールを選択するには、次の重要な要素を考慮する必要があります。
- エラーのカテゴリ(データベースレベル、ビジネスロジック、GUIなど)
- 自動化を担当する人(開発者またはテスター)
- プログラミング言語と開発環境
- テストデータのセットアップと管理プロセス
- バージョンとCIシステム管理
- サポートされるプラットフォーム
これにより、現在の技術に適合した統合ツールを見つけ、テストプロセスを迅速化することができます。例えば、
- APIテストツール
- オープンソーステストツール
- テスト自動化ツール
⑨プログラミングの基本的なスキルの習得
テスト自動化エンジニアとして活躍するためには、プログラミングの基礎知識が不可欠です。コーディング、IDEの利用、ソースコード管理、競合の解決、コーディング規約の遵守、そしてプログラミングの基本的なスキルが求められます。
⑩ 新技術への対応
自動化テストの分野は日々進化しており、新しいツールや手法が常に登場しています。テスト自動化エンジニアは、常に最新の技術動向に目を光らせ、新しい技術を積極的に取り入れる必要があります。
- ビルドツール:Maven, ANT, Gradle, v.vv..
- CI/CD: CircleCI, Docker, Jenkins, v.vv..
- クラウド環境:Testingbot, AWS, Browserstack, v.vv..
- BDD: Specflow, Serenity, Cucumber, v.vv..
- モバイルテスト:Perfecto, Appium, v.vv..
- デスクトップアプリテスト:AutoIT, Appium, v.vv..
多くのテスト自動化エンジニアは、この分野が常に新しい技術や知識を要求するため、独学でスキルアップを図っています。 自動化テストを学びたい方は、書籍、オンラインコース、動画などを活用し、積極的に知識を深めていきましょう。